土
■ 五行における 土 とは?
中医学では、私たちのココロとカラダは、自然のリズムとつながっていると考えます。このつながりを五行という5つのエレメント――木・火・土・金・水――で表します。
「土」は、大地のようにすべてを受け止め、育み、安定を象徴するエレメント。安心感や調和、思いやり、中央でバランスをとるエネルギーを帯びています。
■ 土 の持つイメージ
「土」は、どっしりと受け止める力 を表します。そこから、安心、思いやり、安定といったエネルギーを象徴しています。
大地が植物を育てるように、私たちのココロとカラダを温かく支え、落ち着きをもたらす──それが土のエネルギーなんですね。
■ カラダにおける 土 の役割
● 土 に属する 脾 と 胃
「土」のエネルギーは、カラダに栄養と安定を与えてくれる力。自然界では大地が命をしっかりと養い育てるように、私たちのカラダの中でも脾と胃が飲食物を消化して、元気のもとになる栄養をつくり出しています。
この栄養が全身に行きわたることで、ココロもカラダも安定して、安心して毎日を過ごせるようになるんですね。
● 脾 とのつながり
五行で「土」に属する臓は脾です。中医学では、脾はただの消化のための臓器ではなく、氣・血・水を生み出す源 として大切にされています。
脾の大きな役割は運化 。これは、飲食物から取り出した栄養のエッセンス(=水穀の精微)を、カラダの隅ずみに届ける準備をする働きです。
さらに脾には、水穀の精微を肺や心に持ち上げる力や内臓が下がらないように支える力(昇清)、血を脈中にとどめておく力(統血)もあります。
脾の働きが整っていると──
- 食べたものがしっかり消化され、胃もたれしにくい
- 元気が補われて、疲れにくくなる
- 唇や肌にツヤがあり、血が漏れにくくなる(出血しにくい)
反対に、脾の働きが乱れると──
- 食欲が落ちたり、下痢やお腹の張りが起きやすい
- 手足に力が入りにくくなる
- 鼻血や月経過多などの出血トラブルが起こりやすい
- 唇の色が白くなったり、味を感じにくくなったりする
といったサインが現れやすくなります。
● 胃 とのつながり
胃は、脾とペアで働く腑です。
飲食物をまず受け入れ、それを温めながらドロドロの状態にし、栄養になるように変えていきます。まさに、カラダの栄養づくりの出発点といえる存在です。
こうして作り出された水穀の精微は、脾によって吸い上げられ、全身にめぐる氣・血・水の材料となっていきます。一方、残ったものは小腸へと送られ、さらに細かく仕分けされていきます。
また、胃には、飲食物をスムーズに下へ送る働きもあります。この流れが整っていると、食後にお腹がスッキリ軽く感じられ、胃腸の調子も安定しやすくなります。
胃がしっかり働いていると──
- 食べものをしっかり受け入れて、ムリなく消化できる
- お腹が快適で、食後に重たさを感じにくい
- お通じのリズムも整いやすい
反対に、胃の働きが弱まると──
- 胃もたれ、食後の不快感、食欲不振
- ゲップ、吐き気、胸やけ
- 冷たいものや乾いたものに敏感になり、口の渇きや飲み物ばかり欲しくなる
といったサインが現れやすくなります。
■ 暮らしのヒント ― 土 を整えるケア
土のエネルギーは、安心感や安定、栄養を育むことで整います。食事や睡眠など、日々の暮らしを見直して、ココロとカラダがほっとできる時間をつくることがポイントです。
● ココロのケア
土のエネルギーが滞ると、考えごとが止まらなくなったり、不安になりやすくなったり、なんとなく気力が湧かないといったサインが現れやすくなります。
そんなときは、「今、ここ」に意識を向けることを心がけてみましょう。
家事や食事、歩くときなど、いつもの行動をゆっくり丁寧に行うだけでも、頭の中が少しずつ静かになっていきます。
また、モヤモヤや不安で頭がいっぱいのときは、紙に書き出してみるのもおすすめ。
ぐるぐると回っていた思考がいったん外に出ることで、脾のエネルギーが落ち着き、ココロに余白が生まれてきますよ。
● カラダのケア
土は消化をつかさどるエネルギー。脾や胃の調子が整っているかどうかは、お腹の張りや食欲、口の状態、手足の疲れやすさなどに現れます。
食べた後にお腹が重たくなる、口の中がネバつく、味がわかりにくい、手足がだるい、むくみやすいと感じるときは、脾胃に負担がかかっているかもしれません。
そんなときは、まずお腹を冷やさないことが大切。温かい飲み物を選ぶ、腹巻きなどでお腹まわりを温めるなど、やさしくケアしてあげましょう。
また、よく噛んで食べることも脾をいたわる大事なケアです。消化の負担が減って、エネルギーがスムーズに生まれやすくなりますよ。
● 食のケア
甘味は、脾胃を助ける味といわれます。ここでの甘味はお菓子ではなく、カボチャ・サツマイモ・お米・にんじん・山芋など、自然な甘さのある食材のこと。こうした食材を日々の食事に取り入れることで、脾の働きを整えるサポートになります。
ただし、食べすぎはかえって負担になるので、腹八分目を心がけるのも大切なポイント。
また、脾は「湿」に弱いため、冷たいもの・生もの・油っこいものの摂りすぎには気をつけましょう。
● 行動のケア
土は、思うこととつながりの深いエネルギー。考えすぎたり、心配ごとが続くと、脾胃の働きが弱まりやすくなります。
そんなときは、あえて行動を小さく区切って、「今、目の前のこと」に意識を向けてみましょう。それが、ココロとカラダの安定につながっていきます。
たとえば、
- テーブルの上だけ片づける
- お気に入りの茶器で、一杯のお茶をゆっくり味わう
- 湯船にゆっくり浸かる
- 窓を開けて深呼吸する
など、小さく完結できることを一つひとつこなすことで、頭の中が整い、自然と安心感が戻ってきます。
こうした小さなことを続けていくことで、滞っていたものが流れ出し、ココロもカラダもラクになっていきます。