■ 五行における 金 とは?

中医学では、私たちのココロとカラダは、自然のリズムとつながっていると考えます。このつながりを五行という5つのエレメント――木・火・土・金・水――で表します。

金は、秋の澄んだ空気や収穫を象徴するエレメント。引き締める、整理する、不要なものを手放すエネルギーを帯びています。

 


■ 金 の持つイメージ

金は“整えて収める力”を表します。そこから「規律」「決断」「手放し」といったエネルギーを象徴しています。

たとえば、金属が冷えて形を保つように、物事をきちんとまとめて筋を通す力。そして、秋に葉が落ちるように、不要なものを手放し、次の季節に備える力。

この「引き締める」と「手放す」両方の働きがあるからこそ、ココロや生活をすっきり整えることができる──それが金のエネルギーなんですね。

 


 

■ カラダにおける 金 の役割

● 金 に属する 肺 と 大腸

「金」のエネルギーは、整えて手放す力。自然界では秋になると、木々が葉を落として静かに冬の準備を始めるように、私たちのカラダの中でも、肺と大腸がいらないものを外に出し、大切なものだけをしっかり取り込む役割をしています。

「取り入れて、手放す」働きが上手くめぐっていると、カラダの中はスッキリと軽くなって、ココロも自然と軽やかに過ごせるようになりますよ。

● 肺 とのつながり

五行で「金」に属する臓は肺です。呼吸を通して清らかな氣を取り入れ、いらないものを外に出すことで、ココロとカラダのめぐりを整えています。

さらに肺は、氣や水のめぐりを調整したり、皮膚や免疫の働きにも関わったりと、さまざまな役割があります。

肺の働きが整っていると──

  • 呼吸が深く、気力に満ちた状態を保ちやすい
  • 血や水のめぐりがスムーズで、肌が潤う
  • 汗や尿が適度に排出され、カラダの中がスッキリと保たれる
  • 肌のバリア機能が働き、外からの刺激に強くなる

逆に、肺の働きが乱れると──

  • 咳、息切れ、胸の圧迫感
  • 声が弱々しくなる、喉が枯れる
  • 鼻づまりや鼻水、においがわかりにくくなる
  • 自汗(動いていなくても汗が出る)、寒気を感じやすくなる
  • 肌が乾燥しやすく、かゆみが出たり、外からの邪気(ウイルス・風邪など)を受けやすくなる

といったサインが現れやすくなります。

肺は、鼻と皮膚ともつながっています。鼻づまりやにおいの変化、肌の乾燥やかゆみなども、肺の状態を映し出していることがあります。

● 大腸 とのつながり

大腸は、肺とペアで働く腑です。

小腸から送られてきたものの中から水分を再吸収し、不要なものを便として外に出します。いわば、大腸はカラダの”手放す係”なんですね。

大腸の働きが整っていると──

  • 排便が自然にスムーズ
  • お腹が軽く、張りや不快感が少ない
  • カラダ全体が軽やかに感じられる

大腸の調子が乱れていると──

  • 便秘や下痢が起こりやすい
  • お腹がゴロゴロ鳴ったり、痛みを感じることがある
  • 肺の働きにも影響が出て、咳や息苦しさにつながることも

といったサインが現れやすくなります。

 

 


■ 暮らしのヒント ― 金 を整えるケア

金 のエネルギーは、手放して整える力。呼吸を深めたり、モノや感情を整理することで、ココロとカラダがすっきりと整いやすくなります。溜め込まずに流していくことがポイントです。

● ココロのケア

金のエネルギーが滞ると、 気持ちが落ち込みやすくなったり、過去のことにこだわって手放せなかったりすることがあります。

そんなときは、ふっと一度立ち止まって、静かな時間を過ごしてみましょう。朝の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込むだけでも、内側にこもっていた感情が少しずつほぐれていきます。

また、「もう大丈夫」と思える考え方や人間関係、気がかりを、ひとつ見送ってみるのもおすすめです。小さな“手放し”の積み重ねが、ココロに余白を作ってくれますよ。

● カラダのケア

肺とつながりのある鼻・皮膚・喉にもサインが出やすいので注意しましょう。

たとえば、鼻づまりやにおいの変化、肌の乾燥やかゆみ、便秘や下痢などがあるならば、乾燥を防ぎ、潤いを保つことを意識してみましょう。乾燥が気になる季節は、マスクや加湿、こまめな水分補給などで鼻や喉を守るケアがおすすめです。

また、やさしく腸をマッサージしたり、ぬるめのお風呂で温めたりするのも、腸や肺の働きをサポートするセルフケアになりますよ。

● 食のケア

辛味は、肺を助ける味。ネギやしょうが、大根、みょうがなど、香りがよくてちょっぴり刺激のある食材は、肺のめぐりを助け、カラダの中の余分なものをスッと外へ出してくれます。

ただし、辛味が強すぎると、潤いを消耗して乾燥を招くことも。とくに肺は乾燥に弱いため、季節や体調に合わせて、ほどよく楽しむのがコツです。

また、大根・れんこん・白ごま・梨などの白い食材は、肺をやさしく潤すといわれています。乾燥しやすい時期には、意識して取り入れてみましょう。

● 行動のケア

金は、決断や手放し、秩序をつかさどるエネルギー。ココロや生活が散らかっているときこそ、この金の力を借りて、すっきりと整えていきましょう。

キーワードは、「手放す勇気と整える習慣」。

たとえば──

  • 財布の中のレシートを一度全部出してみる
  • スマホの通知をオフにして、静けさを取り戻す
  • 今の自分に合わなくなった予定や習慣を、思いきって“やめる”と決める

ずっと続けていたことでも、「もうがんばらなくていい」と気づくことがあります。やめることは、あきらめではなく、本当に大切なことにスペースをあける選択。

また、金は肺とつながりが深いため、呼吸を深めることも大切です。息をしっかり吐くことで、不要なものが出ていき、自然と新しいエネルギーが入ってきます。

日々の中で、手放して整える時間を少しだけでも持つこと。それが、金のエネルギーをめぐらせ、次に向かう力を育ててくれますよ。

 

こうした小さなことを続けていくことで、滞っていたものが流れ出し、ココロもカラダもラクになっていきます。