血が支えるココロとカラダ
■ 中医学の 血 って?
中医学と西洋医学の両方で 血 という言葉を使いますが、その意味は少し違います。
西洋医学では、血は赤血球・白血球・血小板・タンパク質・電解質などからできていて、循環・免疫・ホルモン調整などの働きを持つと考えられています。
それに対して中医学では、血(けつ)を細胞の集まりとしてではなく、カラダのすみずみまで栄養や潤いを届け、命を支える大きな役割があるものと考えています。赤い液体としての血であることは同じですが、そこに込められた意味はもっと広いんですよ。
■ 血 はどうやってつくられるの?
私たちのカラダの血は、大きく2つの材料からつくられます。
- 飲食物から得られる栄養のエッセンスである「水穀の精微」
- 生命の根源となるエネルギーである「精」
飲食物は、脾や胃の消化吸収の働きで水穀の精微に変わり、肺に運ばれます。そこで心と肺の氣の働ききを受けて、血へと生まれ変わります。
一方で、腎に蓄えられた精は骨に注がれて髄となり、そこから血がつくられます。また、この精は肝にも届き、清らかな血を生み出す力にもなっています。
このように、血をつくりだすうえで特に大切なのが脾です。そのため、中医学では「脾は氣血生化の源」ともいわれています。だからこそ、食生活に目を向けることが大切なんですね。食生活を調えること=脾を労わることです。ちょっとだけでも目を向けてあげることが、血を生み出して、カラダを元気に保つカギになりますよ。
■ 血 の働き
中医学では、血は全身に栄養と潤いを届け、ココロを落ち着ける役割があると考えています。血は血管の中をめぐりながら、臓腑が働きやすいように助け、さらに皮膚や筋肉、骨にもしっかり届いて、それぞれが元気に働けるようにしています。
● カラダ中に栄養と潤いを届ける
臓腑や筋肉、骨は、血からの十分な栄養を受けて元気でいられます。栄養たっぷりな血がしっかりあると、顔色は明るくなり、肌や髪にツヤが出て、爪や骨も丈夫になります。
● カラダの動きや感覚を支える
中医学の古典の『黄帝内経』には、こんな風に書かれています。
- 肝に血があれば、目は良く見える
- 足に血があれば、しっかり歩ける
- 手に血があれば、力強く握れる
- 指に血があれば、物をきちんと掴める
つまり血は、筋肉の動きや感覚機能を支えているんですね。もし血が足りなくなると(=血虚)、めまいや視力の低下・目のかすみ・耳鳴り・手足のだるさなどの不調が現れてきます。
● ココロや精神を落ち着かせる
中医学では、ココロや精神の働きも血と深く結び付いていると考えています。血がしっかりたっぷりあると、エネルギーに溢れて気持ちも落ち着き、頭もスッキリ冴えます。
反対に、血が足りなくなると、眠りが浅くなったり、物忘れが増えたり、ひどいときにはココロが不安定になって、精神的な不調につながることがあります。